選手生命を左右する障害 4  膝関節:内側側副靭帯(MCL)損傷


1、どのようなときにおきやすい?
ローキックを膝周囲にもらった
関節技で膝関節を決められた
キックを相手につかまれ膝を捻られた
タックルを受けた
など、膝関節が内反もしくは捻られるような外力が加わった場合です。
打撃系、組技系、総合を問わず頻度の高い怪我です。


2、選手生命を分けるポイント〜膝が弱点になるのを防ごう!
断裂が疑われる場合、固定をせず練習や試合に復帰してしまうと、靭帯が伸びてしまい膝がぐらぐらになってしまいます。
実際に膝がゆるいままリングに上がりますと、試合中踏ん張りが利かなかったり、バランスが悪くなったりということが起こります。
当然、試合では膝がウィークポイントとなり、相手に膝を攻撃されることが直接負けにつながるので要注意!!
また、膝の不安定性が続くと半月板にも障害が出てしまうことがあります。
○:固定を行い、膝の不安定性がないことを確認してから本格的に復帰する。
×:固定をせず、膝がゆるいまま復帰してしまう。

3、受傷してしまったら、、、
まずはRICEを48時間やりましょう。損傷が激しい場合、歩けない場合、痛みが強い場合その他受診が必要な場合は自己判断せず必ず整形外科を受診しましょう。
20分冷やし、40分休みます。湿布や塗り薬で消炎をはかりつつ、弾性包帯(伸び縮みする包帯)で圧迫します。


4、固定はどうする?
48時間たち、痛みがなくなれば固定の上トレーニングとなります。
固定には最初はニーブレースという装具を使用します。ニーブレースを使用すると、一定方向からの外力が制限されるため安全にトレーニングや練習を進めていくことができます。最初は固定が強固なブレースを、靭帯の癒合が進み膝の安定性が獲得できたらソフトタイプのブレースに替えていきます。
様々なタイプがありますので用途とサイズをよく考えて体にあったものを選びましょう。


5、復帰までのトレーニングの流れは?

@ブレースをつけての筋力トレーニングとストレッチ
靭帯が癒合し、筋力と柔軟性が受傷前に戻ったら、
Aブレースをつけての練習(対人練習、スパーリング以外)
ブレースをつけての練習が問題なくなったら、
Bブレースを軽いもの(ソフトタイプ)に代えて筋力トレーニング、ストレッチ
膝の不安がなくなったら、
Cソフトタイプのブレースでの練習(対人練習、スパーリングOK)
ブレース着用で練習上問題がなければ、サポーターやテーピングで固定、靭帯を補強。

という流れで組み立てていきましょう。実際、練習の強度や試合の時期などを考慮して、固定具を考えていきます。
(気をつけること)1、ブレースの種類によっては、プラスチックや金属が入っているものがあります。これらを使用したままでのスパーリング(特に打撃)は相手にとっても危険ですから練習の際には使用しないようにしましょう。
対人練習の際にはソフトタイプが適しています。
2、ブレースをつけたまま筋力トレーニングを怠ると筋力が低下してしまいます。
ブレースの役目はあくまでも危険な動きを制限し、安全に筋力をアップさせ、靭帯の癒合を確実なものにすることです。
3、ブレースをつけると、膝の不安定性がなくなりますから、治ってしまったかのような錯覚を起こし、激しい練習をやってしまいがちです。ブレースの目的をよく理解して使用することをお勧めします。


6、トレーニングの内容

主に膝周囲の筋力トレーニングとストレッチが中心となります。
レッグエクステンションやレッグカール、軽いスクワット、レッグランジなど。
大腿四頭筋とハムストリングスを強化していけば、膝の不安定性が改善されます。


7、かくくりちょこっと解剖学

モデルは右の膝を前からみたところです。画面右に縦方向に長いオレンジ色の靭帯が走っていますが、これを内側側副靭帯(内側靭帯ともいう)といいます。大腿骨(太ももの骨)と脛骨(スネの骨)を強く結びつける靭帯の一つで、膝の外側から力が加わったときや膝から下が捻られたときに断裂しやすくなります。










大腿、膝関節など