ファイターのための湿布ガイド

「湿布は暖かいのと冷たいのどちらがいいのですか?」
格闘家のみならずスポーツ選手や一般の患者さんからご質問をいただきます。
現在、湿布は様々なタイプを病院やドラッグストアで手に入れることができます。ここでは格闘技やスポーツを行う上で上手に使いこなす方法をご紹介いたします。


冷湿布と温湿布の相違点

タイプ 冷湿布(つめたい) 温湿布(あたたかい)
主な成分 消炎鎮痛剤にメントールなどの
清涼感のある成分を配合
消炎鎮痛剤にトウガラシエキスなどの
局所血流をアップさせる成分を配合
表面温度         ↓(下がる)            ↑(上がる)
貼った感触 ひんやりした感じ。心地よい刺激 徐々に暖かくなってくる
どんなときにつかう? 炎症の急性期 慢性的な障害や痛み
作用のしくみは? 炎症部位の血管を収縮させ、炎症や痛み
を発する物質の生成を抑える。
血流を増やすことで老廃物の吸収を促し
治癒を早める。また、ウォームアップ効果
により筋肉や関節の動きを高める。

練習、トレーニング編

・練習中に関節を軽くひねってしまった。
・ローキックをもらい、太腿が痛む。
・投げ技で腰を傷めた。
・キックで脛が相手のひじにあたって傷めた。
・ハードなウエイトトレーニングで筋肉痛が予想される。
・ダッシュを繰り返したためハムストリングスが固くなっている。
などの一時的な損傷の場合

2〜3日は冷湿布とRICE処置で様子を見る。炎症が治まれば温湿布に移行する。

・関節や靭帯の故障が治り切っていない。
・いつもなんとなく腰の調子が良くない。
・特定の部位に疲労がたまっていて動きが悪い。
・柔軟性に欠ける、または動きの悪い部分がある。
・寒いときや天気が悪いときに痛む部分がある。
・かつて手術をした部位である。
といった慢性的な障害部位には     
⇒温湿布であたため、ウォーミングアップとストレッチを念入りに行う。

・慢性的に良くない部分を今日の練習でまた傷めてしまった!

⇒2〜3日は冷湿布とRICE処置で様子を見る。炎症が治まれば温湿布に移行する。



試合編

・試合会場に着く前に、慢性的な障害を抱えている部分に温湿布を貼っておき、事前にウォームアップ効果を高めておく。

・試合
ワンマッチの場合:試合後に傷めた部分に冷湿布とRICEを併用する。

トーナメントの場合:試合直後は冷湿布とRICEを併用する。次の試合が近づき、ウォーミングアップの時間帯になれば@動きを優先する場合は冷湿布を外してゆっくりと動かしてアップする。A痛みがあまりに強く鎮痛効果を期待する場合はICEING(冷却)を徹底して続ける。(あくまでも対応は選手の状態によりケースバイケースです。)
自分の試合がすべて終わったら冷湿布とRICEを併用する。
注意:RICEと湿布での対応はあくまで対症的な応急処置です。試合で負傷した場合、必ずドクターの診断を受け、指示に従ってください。

試合中は道衣着用かどうか、またルールによって使えるかどうかが決まってきます。
使用可能な場合は剥がれて試合に影響が出ることがないように、テーピングで固定しましょう。


湿布の貼り方のコツ

1)角度に気をつけよう

例えば肘関節の場合、曲げたときと伸ばしたときの角度差がとても大きく、湿布を貼る時の角度を誤ると動きにくかったり、はがれやすくなったりすることがあります。張る前に自分で曲げ伸ばしを行い、大体真ん中付近になるように角度を決めて貼ると良いと思います。


2)切れ目をいれて使いやすくしよう

膝の内側および外側の靭帯に貼る方法です。膝蓋骨(膝のお皿)は可動性が大きいためその部分を逃がして貼ります。


親指の付け根を傷めた場合の張り方です。拳を握るとき湿布が邪魔にならないように、真ん中よりやや端に切れ目を入れるのがポイントです。

3)はがれやすい部分はテーピングと併用しよう。
試合や練習中の動きのある場面では、湿布が剥がれてしまわないようテーピング固定を併用しましょう。


(気をつけること)湿布に含まれる成分はメーカーや商品によって異なります。
アレルギーや喘息のある選手の場合、副作用が出やすいので気をつけてください。また、皮膚炎が起きた場合は直ちに使用を中止しましょう。


格闘技は故障との戦いです!自分にあった薬剤を上手に利用して怪我を最大限に予防しましょう。