スポーツ外傷の応急処置

格闘技では打撲や捻挫、骨折といった外傷が頻繁に見られます。このようなとき適切な応急処置を行うことにより、機能障害の予防や早期の回復が見込まれます。正しい知識のもとに自分で処置を行いつつ、速やかに専門のドクターにかかることがもっとも理想的と思われます。また道場やジムにおいても安全性を高めることに繋がるため、練習生や少年部の保護者たちも安心できることでしょう。

RICE

R:Rest(安静)

I:Ice(冷却)

C:Compression(圧迫)
E:Elevation(挙上)

スポーツ外傷の定石としてRICE処置はひろく行われています。損傷が緊急を要するもの(生命の危険や重篤な後遺症を起こすもの)でなければ、ドクターにかかるまでの間、RICEをスタートしたほうがよいでしょう。(本当に信頼できるドクターにかかるまで、どのくらい時間のかかることか・・・)RICEを開始するタイミングですが、これは早ければ早いほど良いとされています。受傷後20分以内にRICEが、競技復帰までの数日から数週間の差となるという報告もあります。

RICEの目的

RICEの4つは、なにやら複雑な印象を受けるかもしれませんが、そのしくみはいたってシンプルです。炎症と出血を抑えるために、4つを行う、と考えてください。

@受傷により組織が壊れる。
A患部の内出血、炎症が始まる。
B組織内に血液や組織液が溜まる。腫脹が起こる。。いわゆる‘腫れた’状態。
C腫脹が高度になると神経や筋、腱などを圧迫する。
D動きに支障をきたす。(運動障害や感覚障害が起こる)


この流れのAの段階で抑えよう、というのがRICEの目的です。言い換えればB以上に進んで
しまったものに対しての効果よりもBに進まないための予防的なもの、と捉えてください。REST安静により患部を休ませる、ということです。動かせば腫れがひどくなりますよね。ICE冷却により血管の収縮を促します。血管は暖めると開き、冷やすと閉まる作用があります。お風呂に入ると血行が良くなるのはこのためです。腫らさないためには冷やすことです。COMPRESSION圧迫により物理的に腫れるスペースを小さく保ちます。ELEVATION挙上により患部に流れ込む血液に量を減らします。血液は重力に従い、下方に向かう性質がありますので、心臓より高い位置に患部を挙上し腫脹を防ぎます
RICE
の実際

REST:局所の安静を保つことが大切で、ときには固定を必要とすることもあります。痛みがたいしたことないから、というだけで患部を酷使するのは後遺症の発生につながり、選手生命にかかわります。
                                      
ICE:最初の48〜72時間をぬれタオルの上から氷で冷やす、20分冷やして40分休むを基本とて怪我の程度にあわせてアレンジしています。損傷のタイプや部位、体型などで違ってきます。                                             
COMPRESSION:弾性包帯をつかうと便利です。末梢(手足なら先のほう)から巻いてきます。アイスパックも一緒に巻くことで、ICE+COMPRESSIONも可能となります。巻きすぎには注意!です。神経や動脈の圧迫がないかチェックする必要があります。皮膚の色、温度、感覚をこまめにみるようにしましょう。
                       
ELEVATION:枕などを用いてなるべく心臓より高い位置にキープします。(現場ではキックミットなどが現実的です。)24時間から72時間程度が基本です。








以上、RICEを簡単ですが紹介いたしました。これらはあくまでも応急処置ですので、損傷の程度や種類によっては緊急の医学的処置を必要とします。必ずスポーツ医学のトレーニングを受けたドクターにかかるようにしましょう。