選手生命を左右する障害 3 ハムストリングス断裂


後ろ回し蹴りもハムストリングスが重要な働きをします。

ハムストリングスは股関節、膝関節にまたがる大きな筋群の総称です。とても疲労しやすい筋群で格闘技においても損傷がよく見られる部位です。


1、どのようなときにおきやすい?
下半身を、ウォームアップなしに急に動かしたときに断裂しやすい。
前蹴り、前蹴上げを力いっぱいやった、
全力でダッシュした、
ハイキックを相手に受けられて足が引っかかった、
蹴り足を相手にとられた、、など
また、練習中によく見られるのは、ストレッチのやりすぎやペアでストレッチをやって急に背中を押された場合です。
前述のように膝関節、股関節を動かすときに働くため、疲労が大きく固まりやすい部位です。
特に寒い冬場は要注意!あたためて、十分なウォームアップとストレッチを行わないと肉離れを起こしやすいので気をつけましょう。


2、筋が断裂するとどうなる?
ハムストリングスにピキッという違和感を感じ、ハムストリングス部の疼き、痛みが激しく、膝が伸ばしづらくなるといった症状が出てきます。
試合中であれば立っているのが辛くなり、急に動きが悪くなる、場合によっては試合を中止するほどのダメージを受けることもあります。

3、受傷してしまったら、、、
まずはRICEを48時間やりましょう。
20分冷やし、40分休みます。湿布や塗り薬で消炎をはかりつつ、弾性包帯(伸び縮みする包帯)で圧迫します。
一人で歩けないことも多いので、セコンドの肩をかりましょう。損傷が激しい場合は整形外科を受診してください。

4、復帰へのリハビリは?
48時間たち、痛みがひいてきたら復帰に向けてのエクササイズを始めます。
ステップ1
自力で負荷をかけず、膝の曲げ伸ばしを行います。


ステップ2
ストレッチを痛みが出ないように軽く行う。

PNFストレッチ
@脛のあたりを手でつかむ。
Aハムストリングスを6秒間、縮める。
B2秒間リラックス
Cハムストリングスを伸ばすようにゆっくり体を前に倒す。
D倒した場所から同じようにAからCを行う。
痛みがないようにゆっくり行ってください!
PNFストレッチの詳しいやり方はPNFストレッチ

ステップ3
筋力トレーニングとストレッチを行う。


以上を施行している間も、上半身のトレーニングは継続していきましょう。

5、練習復帰のチェックポイントは?
@まったく痛みなくハムストリングスを伸ばせる
Aゆっくりしたジョギングができる
B半分くらいのスピードで走れる
C全力疾走できる

@からCまでを段階的に試してみて、運動後にまったく痛みや違和感がないことが確認できたら、さあ、練習へ復帰です。(突然ダッシュしないように!また、痛み、違和感が見られた場合、運動の強度を下げます。(たとえば、Bで違和感があった場合、Aまでの運動と上記のリハビリを行います。)

6、ここが、わかれめ!
(再発する選手)痛みがなくなった→すぐに練習→筋断裂部が瘢痕化(筋がかさぶたの様な繊維に置き換わり、筋全体の弾力性が低下する→再受傷→ウィークポイントとして残る。

(再発しない選手)しっかりRICE→エクササイズ→柔軟性の向上→筋力の向上→ストレッチの習慣化→弱点を補強し、受傷前より強くなる。

非常に再発の多い部位ですから、何度も傷めている選手は気づかないうちに再発するサイクルにはまってしまっています。思い切って治療とエクササイズに専念することをお勧めします。


7、ハムストリングスの断裂のリスクの高い選手
ハムストリングスが固い、
姿勢が悪い、
ハムストリングスが弱い、
大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)が強すぎてバランスが悪い、
ウォーミングアップの習慣がない、
ストレッチを行わない、もしくは不十分

8、カククリちょこっと解剖学  ハムストリングス

図は、太ももを後ろから見たものです。
ハムストリングスは@大腿二頭筋、A半腱様筋、B半膜様筋からなります。主な働きは骨盤を前に突き出す、足を後ろに振る、膝を曲げるなど、下半身の動きのなかでも重要な筋群です。A:股関節 B:膝関節













カカト落しの蹴り足や、膝蹴りの軸足、体全体を前に出す動きもハムストリングスのかかわりが大きいです。陸上選手、スプリンターもこのハムストリングスが発達しています。



9、ハムストリングスに関する裏技
温湿布、サポーターを使用すると、ハムストリングスの柔軟性が増します。

ハムストリングスに関する質問と答えはこちら→ハムストリングスと内転筋