格闘家〜戦うためのボディー

1、食事が選手を強くする!ー超回復をねらえー
激しいスパーリング、サンドバックやミットへの打ち込み、限界までのウエイトトレーニング、、、これらはすべてミクロレベルで筋繊維を破壊することになります。身体面からみると、「強くなるための運動」は「筋を破壊し筋力を弱くしていく作業」にあたります。
そこで壊れた筋肉に適切な栄養と休養を与えますと超回復(ちょうかいふく)という現象がおきます。この超回復により、筋肉はなんと20パーセントも強くなって回復してくれます。
この時期に十分な栄養と休養が与えられないと、筋肉は細くなり、パワーやスピードは落ちてしまい、強くなるために練習したのに逆に弱くなってしまうという悲しい結果に終わってしまいます。
上手に超回復の現象を活用して、スーパーボディーを目指してください!

2、格闘選手の特徴
野球のピッチャーが140キロのスピードでボールを投げると、4〜5本の筋繊維が断裂するといわれています。
ノンコンタクトのスポーツ、つまり自分の身体を思いっきり動かすだけで切れてしまうことがお分かりだと思います。
格闘選手の場合は対人のコンタクトスポーツですから、
・自分の身体を動かす⇒パンチやキック、投げや関節技で急激に筋肉を収縮させる
・自分の攻撃が相手にあたる⇒打撃の反作用が自分に帰ってくる
・相手の攻撃をもらう⇒筋が損傷する
・相手の攻撃(とくに関節技や投げ技)に耐える⇒筋の緊張状態が続く
などなど、一回の練習で筋繊維が壊れる可能性は、一般スポーツに比べても格段に大きいことが予想されます。これらに加えて筋力トレーニングやサーキットトレーニング、コーディネーションなどの補強も練習メニューに加わることになります。
このことからも、格闘選手の場合はたんぱく質やアミノ酸等、身体を維持する栄養素を普段から摂取する必要があると考えます。

3、怪我と戦う
格闘技はお互いダメージを与え合う競技です。試合中にいかに怪我をしないかがひとつのポイントとなります。
怪我をしないための栄養、またダメージを早く回復させるための食事も、強さを高めるために重要な要素となるでしょう。


ボディーメイキングの食事〜筋量とウェイトをUPしたい

タイミングを見極めよう!
「何を食べるか」も大切ですが「どのように食べるか」はもっと大切です。
どんなに高価な食材やサプリメントであってもタイミングを間違うと効果がほとんどありませんから気をつけましょう。

A)トレーニング前1〜2時間 糖分を補給
B)トレーニング中 水分、ミネラルを補給
C)トレーニング後30分 タンパク質と糖分を補給

A)トレーニング前には糖分を補給しましょう。
@脳の栄養:格闘技の練習や筋力トレーニングでは脳にものすごいストレスがかかります。脳の唯一の栄養素である糖(ブドウ糖)が不足していると集中力の低下を招き、思わぬ怪我につながることがありますから要注意。
A運動のエネルギー:筋肉を動かすエネルギーに糖質が使われます。特に無酸素運動といわれる数十秒の短い時間に瞬発的にパワーを発揮する運動の材料になります。
トレーニング前にしっかりした食事をとる場合は消化の時間も考慮して約2時間前、糖質を選択的に軽く摂取する場合(健康補助食品やバナナ、サプリメントといった手軽なもの)は1時間前が良いでしょう。

B)トレーニング中には水とミネラルを補給しましょう。
トレーニング中は大量の汗によって水分とミネラルが失われてしまいます。水分は15分〜20分ごとに、のどが乾く前に約200cc飲みましょう。(マラソンの給水所は実際に15分おきの地点に設置してあります。)実際にのどの渇きを自覚したころにはかなりの水分が失われてしまっています。のどが渇くとのどの渇きを癒すために、必要以上の水分を取ってしまい胃が重くなって運動に影響が出てしまいます。ナトリウムやカリウム、マグネシウムといったミネラル(電解質)も汗と一緒に出て行ってしまいます。これらの補給にはスポーツドリンクが適しています。

C)トレーニング後はできれば30分以内にタンパク質と糖分を補給するのがベストです。
タンパク質は格闘家、スポーツマンにおなじみの栄養素で、筋肉や臓器、器官の材料となっているばかりでなく、体内情報の伝達や免疫機構などにも関わります。
タンパク質は食物から摂取されると酵素によってアミノ酸に分解され、小腸より吸収され肝臓へ、ここでタンパク質に再合成され、血液に乗り組織へ運ばれます。トレーニングにより破壊された筋繊維は、約2時間後にから再生をはじめますから、トレーニング後30分以内にタンパク質を摂るということはその後の吸収、再合成の時間も考えると理想的なタイミングにあたるのです。では糖分を一緒に取るのはなぜでしょう?ひとつはタンパク質が筋肉になるときに、エネルギーとして糖を消費するという点です。つまりタンパク質だけでは筋肉の材料を入れただけで、これを筋肉するには糖質、炭水化物の助けが必要でということになります。
ですから、練習後にジム、道場の仲間とみんなで焼肉を食べに行きライスの大盛りをたのむ、という格闘技の世界でよく見られる光景?は、身体作りという点で非常に理にかなっているということがいえます。また、相撲部屋で見られる朝練後のチャンコ鍋と昼寝はトレーニング、栄養、休養がそろった身体づくりには理想的な環境といえます。

タンパク質についてさらに詳しく


コンディションを高める食事〜疲労を防ごう

格闘家、アスリートの身体は、車でたとえるならF1のマシンです。
F1マシンがその性能をフルに発揮させるには、パーフェクトな車体とそれを操るトップドライバーが不可欠です。選手のコンディショニングもそれと同じ、車体=肉体、そして肉体を自由自在に操るドライバー=脳および神経系ととらえて、この2面からアプローチしましょう。

脳に効かせる!
脳を活発に働かせることがコンディション作りの第一歩です。練習でも試合でも頭がCOOLであれば、何とか不利な場面を乗り切れるものです!脳の栄養分はブドウ糖。タンパク質も脂質も脳のエネルギーにはなりません。ブドウ糖をたくさん含んだ食品(ご飯やパン、パスタなどの炭水化物、バナナなど)で脳の栄養を補給しましょう。

身体の疲労を最小限に抑える!
筋肉が疲労するメカニズム
@筋の活動に伴い、乳酸が筋肉中に増える⇒A水素イオンが増え酸性化する⇒B筋肉収縮の鍵である、ATPの分解が悪くなる。またATPの産生量も低下する⇒C筋活動能力の低下⇒Dパフォーマンスの低下

つまり、筋肉の中が酸性になると疲労が進む、というわけです。
疲労を軽減するために体内をアルカリ性に保つ、という方法があります。重曹(NaHCO3)を運動前に摂取しておきますと血液中がアルカリ性に保たれるため、酸(水素イオン)ができても中和されるという原理です。オレンジやグレープフルーツに多く含まれるクエン酸も体内をアルカリ性にします。
実際に陸上競技400m走や800m走では重曹の摂取によりタイムがアップしたという実験結果がでているそうです。ただし、下痢をしやすいという難点がありますから使用の際には注意が必要です。
また、筋肉内で直接代謝され、速効性のエネルギー源となる分岐鎖アミノ酸BCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)や成長ホルモン分泌を促すアルギニンは運動中の筋肉破壊を抑制、また壊れてしまった筋肉の修復を促進する上、乳酸の産生を抑える効果もあるといわれています。
その他、疲労回復に効果のあるビタミン類を含んだ食事も積極的に摂りましょう。


試合前の食事〜グリコーゲンローディング

試合が近づくにつれてタンパク質の量を徐々に減らし、毎食時にいつもの2倍の炭水化物(ごはん、パンやパスタなど)、間食でも炭水化物を摂取するよう心がけます。

いわゆるグリコーゲンローディング、カーボハイドレートローディングと呼ばれる方法で、筋肉中にグリコーゲン(グリコーゲンは分解されてグルコース:ブドウ糖として利用される)をたくさんためこみ、試合でスタミナを持続させる食事法です。最終的に食事の70パーセントが炭水化物になるように調整していきます。
グリコーゲンローディング開始前に、一度練習で追い込み筋肉中のグリコーゲンを使い切ってしまい、それから高炭水化物食に切り替えるとさらに効果が高いといわれています。
(格闘技の世界では極真の八巻選手が1995年、第26回全日本大会チャンピオンとなったときにグリコーゲンローディングを行っていました。)

また最近ではクレアチン燐酸を筋肉中に貯め込む、クレアチンローディングを行う選手も増えてきています。


試合当日の食事〜食べるタイミング

試合の4時間前 試合の日は緊張感もあり、消化吸収能力が落ちてしまいます。ですからあっさりとした食事を。油っこいものは避けて胃腸にやさしいおかゆやうどん、おにぎりなどの炭水化物を摂ると良いでしょう。炭水化物は糖質となり、脳の栄養と筋肉を動かすエネルギーのもとになります。
試合の2時間前 軽めの間食を。バナナなどを摂る選手が多いようです。
試合の1時間前 水分補給を(摂りすぎに注意)
試合の30分前 水分補給を(摂りすぎに注意)
試合の15分前 水分とブドウ糖の入ったドリンクを。スポーツ飲料を水で2倍に薄めるとよい。
即効性のゼリーなども。
試合後30分以内 軽めの食事をとりましょう。ダメージの軽減になります。
試合後2時間以内 タンパク質を含んだしっかりした食事をとりましょう。
試合で壊れた筋肉を修復する材料を補給してあげましょう。

スペシャルドリンクのつくりかた

水ー800ml
100%オレンジジュースー100ml
はちみつー100g
重曹ー3g
ビタミンC−1000mg


重曹とオレンジジュースに含まれていますクエン酸は、体内をアルカリ性に保ち、乳酸の産生を押さえ疲労を防ぐ効果があります。
はちみつには良質のアミノ酸、電解質、ブドウ糖、果糖、ビタミンB群が多く含まれていますから即効性のエネルギーとしてすぐれた食品です。ビタミンCは骨や皮膚、アキレス腱などの結合組織の合成に関与します。
ビタミンB群とビタミンC、ミネラルは汗をかくと失われる上、体内に蓄積しておくことができない成分ですから外から補わなければいけません。
実際にこのドリンクはサッカーのワールドカップ代表選手が飲んでいるものです。
このレシピをベースに自分だけのオリジナルのドリンクをつくってみてはいかがでしょうか?