格闘技の名古屋祭り222 レポート  BY 実行委員 中谷 太一

格闘技の名古屋祭りから一月が経ち、多くのファイター達と拳を交えることで交換できた感動も、長引く祭りの余韻もようやく落ち着いてきた。

 改めて今回の名古屋祭りを振り返ってみたい。 

 FIGHTLOGY TOUR2009は、名古屋の格闘技ショップ「公武堂」でその幕を開けた。

 FIGHTLOGY TOURのコンセプトは、格闘技と医学がうまく融合し、セミナーやワークショップを通じて選手達が交流し、レベルアップをしていくこと。そして、潰し合うのではなく競い合い高めあうという、格闘技の新しい在り方を提示し、実践することにある。 

 そして公武堂は、格闘技ショップを越えた「マーシャルアーツコミュニケーションスペース・格闘技的交流空間」というコンセプトで、格闘技を単にヤルもの、観るものとして捉えるのではなく、それを通じた人間と人間の交流のツールと捉えている。 

 公武堂は東海地区の格闘家や格闘技愛好家にとってはまさに「聖地」であり、ツアーのコンセプトとマッチした、今回の名古屋祭り222にふさわしい場所であった。 

 今回の祭りは、名古屋祭りナビゲーター、Dr.Fが普段東京の「格闘クリニック」で行っているプログラムの特別バージョン、そしてライトスパーリングを通じた参加者交流会の二部構成で行われた。 

「普段は血液の60%がお腹に集まってるから、それを全身に行き渡らせるんだよ。だから、呼吸が大事!」

「ワンツーは、ワンとツーで分けると別の技になります。ワンツーと一呼吸でやってみましょう!」

「息を吐く時は「あ」行の発音の方が力が出るから!」 

 第一部のプログラムでは、Drがマイクでアドバイスをする度に、参加者もそれを意識して身体を動かす。皆の動きがどんどん良くなっていく。 
 

イメージスパーリングや距離を意識したトレーニング、呼吸とパンチ力の関係など、普通のジムや道場ではあまり行われていないメニューに、参加者は皆「目からウロコ」状態。もっともっと吸収してやろうと、意識が高まっていく。 

 集まったメンバーは、東海地区を代表する道場・ジムや関東・関西から、トッププロ選手や今後を期待される若手ホープまで様々であったが、皆に共通して感じたのは、 

「今よりもっと強くなりたい」という想い。それを強く感じていた。 
 

 第二部では、全員総当りの技術交流会が行われた。リングの上で一人ずつではなく40人全員一斉にだ。これは壮観である。あちらこちらで選手の息遣いとグローブが交錯する音が聞こえる。 

 私もK−1甲子園出場選手や某団体のチャンピオンの方とマススパーをさせて頂いた。こんな事って普通は考えられない。どこに出稽古に行っても、どんなイベントやセミナーでも、こういう交流はまずできない。 


 ここで驚いたのは、皆笑顔でスパーに臨んでいるのだ。もちろんスパーリングには集中してるし、ヘラヘラしているわけではない。スパーを通じてコミュニケーションできてる、それを実感しているだ。 

「お、そういう動きでくるのか。じゃあ、これならどうだ?」

「こんなコンビネーションがあるのか。ディフェンスはどうしようか?」

「こいつ、パンチ上手いな!」「ローキックが速い!」

「おう、来い!」「うむ!」 

 無言のスパーの中で、選手同士のそんなやり取りが聞こえてきそうであった。 
 

 祭りの最後には、ライトスパーリングの特別ワンマッチ大会が行われた。

名古屋期待のホープ対キックボクシング日本チャンピオン、K−1トライアウト合格者同士のスパーリングなど、当初は5試合程度の予定だったが、名古屋の名門道場、大石道場の中学生・高校生達が、「僕もチャンピオンとやらせてください!」と、どんどんと意思表示をしてきたため、最終的に10組以上のスパーとなった。 

 最近の若い子は消極的だとか、クールだとか色々言われることもあるが、チャンピオンとやらせて欲しいなんて、普通ならとても怖くてチャレンジできないのであるが、若き戦士達は目を輝かせてアピールしてくる。

 こういう若い選手が伸び伸びと活躍できる場所を作っていけることが、自分達の世代の役目であり、今後の格闘技界の未来を支えていく一助になると思う。 
 

 今回の名古屋祭りのナビゲーターであるDr.Fは、名古屋祭りの告知パンフレットを作成していたときにこう言った。 

「肩書きはセミナー講師じゃなくて、ナビゲーターにしてください。」 

従来型の講師と受講者という関係、一方通行的なセミナーではなく、皆で作りあげる「祭り」の中でベクトルを示し参加者のエネルギーと熱をどんどん高める存在、それを先生自身は実践している。 
 

「祭り」は、続いていく。 

 今年も全国で、ツアーを慣行し、その熱を伝播していく。

 そして格闘技界に新しい流れが発生する、そんな予感がしている。今年はその胎動の年だ。 

 名古屋の公武堂にはまた秋に帰ってこられるそうだ。

 その時の祭りでは、参加者が一回り大きく成長した姿でまた交流し合う、そんなイメージが浮かんでくる。 
 

 このようなイベントに参加でき、実行委員として関われたことに感謝し、また、格闘技は最高のコミュニケーションスポーツであると実感している 
 

Dr.F、公武堂長谷川社長、スタッフ、参加者の皆さん全員に、ありがとう。

また拳で語り合いましょう。押忍。 実行委員 中谷