選手生命を左右する障害、肩関節脱臼の予防とトレーニング

肩関節脱臼が習慣化した状態、反復性肩関節脱臼で選手生命が絶たれるケースが少なくありません。

1、選手生命は初めての脱臼の対応で決まる、と心得ましょう

反復性に移行するケース
脱臼→整復→試合復帰→再脱臼

正しい対応
脱臼→病院での診察、検査→整復→3w以上の固定と筋力強化などのリハビリテーション→練習復帰→試合復帰

2、どのような時に起こりやすい?
上肢が上方、後方に移動した状態で上肢に力がかかる場合、例)投げられて、腕からマットに落ちてしまった
肩内部の筋に比べて肩周囲の筋が強すぎる場合 例)思いっきり強くパンチを打ったて空振りした

3、あっ、肩が外れた!その時どうする?
@腕を三角巾でつりましょう
A患部のアイシング(20分)をおこないましょう
Bただちに医療施設に行きましょう(レントゲンや診察で関節の状態を確認しましょう。)

医師や専門家以外者に整復をしてもらってはいけません。

4、脱臼が整復されたのに、なぜ固定が必要?
整復がなされると、外れているときより痛みがない。だから治ったと思って固定をしない方がいます。
ところが、一度脱臼すると、肩と腕をつなぐ靭帯や軟部組織が壊れてしまいます。
ですから3週間くらいは三角巾で固定して、壊れた靭帯や組織を修復してやる必要があるのです。
この三週間、我慢できるかどうかが選手生命がどうなるかのおおきな分かれ目です。

5、固定期間中の練習はどうしたらいい?
固定期間であっても、下半身を使ったトレーニング(エアロバイクや筋力トレーニング、バランストレーニングなど)
はどんどんやっていくべきです。
固定期間が過ぎて、肩のトレーニングに行く前に体全体のレベルを上げておくのは格闘選手としては不可欠です。
この期間にどのようなメニューを組めるかが選手、指導者に求められます。


6、打撃格闘技でも肩の脱臼は起きる?
投げやつかみを禁止されている打撃格闘技でも肩の脱臼は起こりえます。
思いっきりパンチを打って外れたり、スリップで転倒した際、腕から落ち脱臼するケースが見られます。
とくにルール上投げやつかみが禁止されている競技の場合、転倒時の受身ができない選手をよく見かけます。
格闘技をやる最低条件として、上手な転び方をマスターしておくとよいでしょう。

7、肩の構造はどうなっている?





骨は上腕骨(二の腕の骨)と肩甲骨(肩の骨)から成り立ちます。この2つの骨に筋肉、靭帯、関節包と呼ばれる袋ががくっついています
















こちらは肩甲骨と上腕骨が接している部分の構造です。インナーマッスルとして有名な筋肉は肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋の4つです。

















脱臼すると、、、、
A、関節唇が欠ける
B、関節包が破れる
C、筋肉の付着部を損傷する

などの変化が起こりえます。













8、固定後のトレーニング方法は?

エクササイズ1

受傷したほうの腕をだらりとぶらさげて、小さな円を書くように回します。慣れてきたら大きく回すようにします。













エクササイズ2

床に仰向けに寝て、軽い棒を持ち、水平位置から垂直位置まで持ち上げては戻す運動を繰り返します。


エクササイズ3
同じく床に寝て、腕を頭の後ろにあてて肘を垂直位置まで持ってきます。慣れてくれば、パートナーに軽く負荷をかけてもらってもいいです。この運動はインナーマッスルに効果があり方の安定性が増します。













エクササイズ4

床に仰向けに寝た状態で、腕でL字を作ります。これをあたま側から、手招きするようにお腹側まで持ってきます。



これらの運動に共通する点はなんだかわかりますか?

それは、腕(肘)が肩よりも背中側にくることがないという点です。肩の脱臼は、上肢を上に、後方に持っていったときに特に起こりやすいですから、原理的にはその逆をやっていけばよいということになります。