格闘技スタミナ論

試合時間とスタミナ
格闘技の非常に面白いところは、「試合時間が一応決まっているがいつ試合が終わるかわからない」という特徴があることです。試合前、長距離の走りこみをしっかりやりこんでフルラウンド動けるように練習をつんで試合に臨んだものの開始数秒で終わってしまう場合もありますし、逆に短期決戦のつもりで倒しに行って、結局倒せずスタミナを大幅にロスしてしまったというご経験をされた選手もいらっしゃるのではないでしょうか?
これがサッカーでしたら、前半45分、後半45分の計90分という試合時間が決まっていますから、「90分の間に何度も全速力のダッシュを繰り返せるスタミナ」が効率的だという具体的なイメージがわきますし、マラソンでしたら2時間近くを周りの選手と駆け引きしながら走りぬくスタミナ」、短距離のスピードスケートなら「0.001秒単位を争う短時間での瞬発力をメインとしたスタミナ」という風に練習の段階でスタミナトレーニングの目標がわかりやすい面があります。
ところが前述のように、いつ試合が終わってしまうかわからない格闘技においては、スタミナ練習の際、「これだ」というイメージを持ちにくいのではないでしょうか?
そういった意味で、格闘技においてはチャンスの時には一気に試合を終わらせることのできるスタミナと長丁場を戦い抜くスタミナ、という相反する両方のスタミナを持ち合わせている必要がありそうです。

ルールや試合形式による影響
格闘技のルールは団体や大会によって様々です。ひとつの団体でいろいろなルールの試合が組まれることもありますし、柔道や空手など一定のルールを採用しているところでも少年、一般、壮年、女子とカテゴリーによりルールが若干異なったり、予選と本戦で試合時間が異なる場合も少なくありません。
ワンマッチかトーナメントかという試合形式もスタミナを創っていく上で考えておかなければならない要素です。特にトーナメント戦で優勝を目指す場合、数試合を勝ち抜くだけのスタミナをベースにもっておかなければなりません。格闘技では、1、2回戦であっけなくKOやギブアップで活を奪うような凄く調子のいい選手が、上位回戦で苦しい展開に耐え切れないこともありますし、1、2回戦で泥仕合を演じ延長戦をやっと勝ってきた選手が回を追うごとに調子を上げていくこともあります。
一試合一試合でのスタミナはもちろん、トーナメント全体を見据えたスタミナ作りも勝つためには重要でしょう。

他ジャンルへの挑戦
最近では、総合格闘家を中心に、あるときはグラップリング中心のジャケットマッチ、その次にはスタンディング、そして総合の大会、と様々なルールで試合をし、実力を発揮する選手が増えてきています。また、カラテ選手がキックに上がったり、柔道やレスリングの選手が総合の試合に出たりと以前では考えられなかったような異なったジャンル同士のクロスオーバーが生まれてきています。これは他のスポーツでいうならば、サッカー選手がラグビーの試合に出るようなものです。
それでは、もともとの得意分野でのスタミナが、他ジャンルでもそのまま通用するのでしょうか?
当然のことですがルールが異なれば必要とされるスタミナは変わってきますし、慣れないルールでは予想以上にスタミナのロスが激しいものです。
他ジャンルに挑戦する際には、ベースの高いスタミナを身につけながら、異なるルールに対応できるアレンジ能力が求められます。