Dr.Fの「えっ?延長戦っ?」

格闘技ドクターがつらつら書く、のんびりコラム集。

つづきはブログかくくりTVで。

ROUND29 最強のK・M法則
ROUND28 スモールワールド
ROUND27 昨日の敵は、
ROUND26 証明する達人

ROUND25 質問
ROUND24 原風景
ROUND23 一生、一勝、一笑。
ROUND22 出店ラッシュ
ROUND21 一番大切な感覚とは?
ROUND20 最強で最弱
ROUND19 東京格闘技
ROUND18 大山総裁の言葉
ROUND17 「声」
ROUND16 遠くて近い仲間
ROUND15 地上の星たち
ROUND14 博多っ子の心意気
ROUND13 メディトレの副作用
ROUND12 ちょっと怖い話
ROUND11 アテネオリンピック
ROUND10 がっ痛伝説
ROUND 9 格闘技の理由(わけ)
ROUND 8 練習で強い人、試合で強い人
ROUND 7 転倒注意報。
ROUND 6 あぶない!成長期の減量
ROUND 5 格闘語〜格闘家特有の言葉2
ROUND 4 ウェイトトレーニングは是か非か
ROUND 3 頑張れ!谷 亮子!
ROUND 2 ベンチと、パンチ?
ROUND 1 格闘語〜格闘家特有の言葉



(写真:格闘技メディカルトレーニングでバランスの指導をする筆者)


ROUND29 最強のK・M法則

強い格闘家の条件。

パワー、スタミナ、テクニック、メンタル、、、、、。

要素を挙げればきりがないですが、一部で定説となっている法則があります!

その法則とは、、、、?

なんとそれは「格闘技で成功している人は名前にKまたはMが含まれているひとが多い。」

マス大山、木村政彦、前田光世といったった現代格闘技の祖にはじまり、

増田 章、緑健児、松井章圭、黒澤 浩樹、八巻 健志、塚本 徳臣、数見 肇、佐竹 政昭、小林 聡、平 直行、村浜 武弘、武田 幸三、立嶋 篤史、魔娑斗、加藤 清尚、長田 賢一、南 豪弘、谷 亮子、井上 康生、熊谷 直子、岡本 依子、須藤元気、近藤有己、鬼塚 勝也、、、、、、などなど。

今パッと思いついた名前を挙げてみました。

あ、おもいっきり偏ったリスト(昭和48年生まれ作成)ですから、

「俺の好きなあの格闘家がいない!」というつっこみと、

「全員誰かわかるからなんか賞品ください!」という要望は今回は自粛してください(笑)

まあ、格闘家の集まる飲み会の席でいろんな名前を挙げながら検証するのが楽しかったりするわけですが、

あるとき、超強い有名選手が、

「ホントだ!MとKはやっぱ強いんだ〜!!俺もMATTA AKEOMIに改名しようかな〜」と一言。

「NITTAさん、すでにKもMも入ってますから改名する必要ないですよ!」

「あ、入ってた!よかった〜!!」

もし改名しちゃって、Mがふたつもあったら誰も止められませんね、きっと(笑)。

やっぱ「Kは勝つ」「Mは負けない」の略なのかな?

そんなわけで、もし名前やリングネームを考える際には是非この法則を思い出してみてください!


ROUND28 スモールワールド

東京で格闘技に関わっていると、いつも驚くことがあります。

それはあまりにも世界が狭いこと。


初対面の人でも、

「僕、○○選手にお世話になっているんです!」

「え、そうなんですか?○○選手こないだ一緒に練習したばかりですよ!」

そんなことばっかり。

人をひとり間に挟むと全員が知り合いになんじゃないか?ていうほど、

東京の格闘技は狭いんです。

こないだも、例のごとく新田選手が試合前のスタミナ点滴にクリニックに登場。

「最近、××さん(日本で有名なミュージシャン)のトレーニング指導してるんですよ〜」

「まじすか!××さんのバックバンドの元ドラマー(アメリカで有名なドラマー)、超仲いいすよ〜」

まさか、新田さんと音楽関係でもつながっていたとは!!!!!!!!

新田さん→六本木→サンフランシスコ→水道橋→私。

なんかスケールのでかい話になってきたぞ。

オーバーワークの治療にやってきた「一撃」で総合デビュー戦見事KO勝利・極真会館の池田選手に至っては、

なんと自分と全く同じ県、市、区、地域の出身。

「え、あの高校ですか?」

「黒崎駅でよく遊びましたよ!」

試合の1週間前というのに、

格闘技の映像見ながら、地元の話で盛り上がるという異常事態に。

しっかり結果を出してしまうからさすが先輩です。

笑っちゃうほどスモールワールド。

これからどれだけ世の中を小さく感じられるのでしょうか?

たのしみです
!!!


ROUND27 昨日の敵は、

昨日の敵は、今日の友。

格闘技で死力をつくして戦った相手には、

なぜかその人のことをずっと前から知っているような気になることがあります。

試合って自分の本当の姿が出やすいから、相手のコアな部分もまた敏感に感じてしまうのでしょう。

以前こんなことがありました。

ある総合格闘技の選手のトレーニングを担当していたとき、

その選手からメールで連絡が来ました。

「今度の対戦相手が決まりました、梅下選手っていいます。キックボクシングの元ランカーで困ったことにキックルールで対戦することになっちゃいました。はっきりいって相当強いです。今度こそ間違いなく殺されますが、トレーニングとセコンドなんとかお願いします。」

「うーんまいったなぁ」内心思いつつ、とりあえず情報収集から。

知り合いの格闘家、誰に聞いても「梅下選手はハンパなく強いよ。」

判で押したようにおんなじ答え。

雑誌を見たら選手名鑑に写真入で載っていました。

最後の頼みの綱である、妻に聞いても「梅下さん、強いよ。今度こそやばいかもね。」

期待した返事は返ってきません。

「とにかく相手のほうがキャリアある分負けられないプレッシャーはあるんだからやれることやろう」

内心冷や冷やしながらも、そんなことをいいながら、試合の日を迎えたわけです。

練習で何度も繰り返した右のストレートから左の返しのフックもさることながら、

一度も練習ではやらなかった上段(冗談?)前蹴りが良い感じで出てドローに持ち込みました。

「よかった。」こんなことをいっては本人に失礼かもしれませんが、私にとっては相手の土俵で、しかも誰もが強豪と認める選手に引き分けたのは勝ちに近いドローでした。

後日、その選手は梅下選手とすごく仲良くなり、私にも紹介してくれました。

実際に話してみたら、すごく礼儀正しく、男気のある選手でした!

それからずっと、みんなで刺激しあう良好な交友関係が続いています。

昨日の敵は今日の友。

そして今日の友は明日の戦友。

素晴らしい仲間に出会えたとき、「ホント格闘技っていいなぁ」って思います!


ROUND26 証明する達人

「達人」

年齢を超越した強さを持ち、年を重ねるほどに強くなる、

そんな達人は本当にいるのでしょうか?

今日、私はそんな男に出会いました。いや、出会ってしまったのです。

新極真会の小泉 英明選手。

40歳にして、年々強くなり続け、

ついには今年行われる空手ワールドカップの日本代表になった選手。

警察官として日々の激務をこなしつつ、家庭人として一家を守る。

そして空手家として現役を続ける本物の達人。

世の中、達人と呼ばれる人は少なくないですが、

「いくつになっても強さが衰えない」というキャッチフレーズで存在している武道・武術のなかで、

実際に、シナリオなしの真剣勝負でそれを証明し続けている人が何人いるでしょうか?

達人の中には、かなり限定されたシチュエーションやお弟子さんに対してだけ「最強」である場合もあったりします。

きちんとしたルールのもとに、20代の若い選手の勢いを押さえ、ダメージを確実に与えて勝つ。

言うのは簡単、やるのは至難。

そんな本物の達人、小泉選手の武器の一つ、最強の脛!!!!

触らせていただいた瞬間、「レントゲン撮りたいっ」そう叫んでしまった私。

恐るべき骨密度を記録すること必死でしょう。

「いったいどうやってこの脛をつくっていらっしゃるのですか?なにか器具はつかわれますか?」

私の質問に、

「砂袋やサンドバッグも使いますが、一番いいのは人ですね」

「ひ、ひとっ?ですか?」

そういいつつ、格闘クリニック読者のために、特別に鍛錬法を伝授してくれましたー!(パチパチ。写真参照。)



「ゴンっ」

軽くやっていただいたのに、私(左のちっさい人)の足にビーンと走る鈍い痛み(汗っ)

なんだこれは?120キロのバーベルが落ちてきたような、コンクリートの電柱が思いっきり倒れてきたような、

なんともいえない辛さ。

「苦しいときは笑おう!」クラス指導のとき、いつも選手にそういっている自分が少し嫌いになりました。

6月のカラテワールドカップでは、

これで外人勢をバッタバッタとなぎ倒してくれることでしょうっ!!

証明する達人、小泉 英明選手の戦いに是非ご注目くださいっ。




ROUND25 質問

最近、おかげさまで格闘家の質問に答える機会が非常に増えました。

トレーニング中や、休憩時間の間はもちろん、格闘技医学の講義中にも積極的な選手から、

まるでキックやパンチの雨あられのごとく質問が飛んできます!!

実際のキックやパンチを浴びている身としては、

肉体のコミュニケーションのあとに、ばしばしと言葉攻めを受けるってのも普通ないよなぁ?と思いつつも、

強くなりたいって本気で思っているレベルの高い選手とのやりとりは、

質問であっても気が抜けなくてスリルいっぱいなのです!!!!

レベルの高い選手は、質問の仕方が実にうまい!

問題点が凄くクリアで、こっちの医学知識やトレーニング知識、また体験や根拠などをうまく引き出します!

例えば栄養学においても、普通の選手は「何を食べたら強くなりますか?」ときいてきます。

一つの答えを求めているのですがが、食べて強くなるものがあれば、みんな食べているはずなんですが。

ところが、世界を相手に戦うクラスになると、「試合まで1週間なんですがこれはどんなタイミングで食べたら効果的ですか?」

「自分はいつもこんな食事なんですが、何か不足しているものがあったら教えてください」

といった感じで、自分の現状認識がはっきりしていて質問も具体的なのです。

そういえば、試合やスパーもそうです。

自分が技を出し、相手の反応を引き出す。

そして相手を自分のペースにはめていく。

相手を引き出すことができる人は、逆に相手の良さ(得意パターン)に対応することが上手なのかもしれません。

先日、ある選手と話していると、

「蹴ったときの肋骨の動き方がとても気になるんですが、どこ意識したらいいですか?」って聞かれちゃいました。

その言葉をきっかけに、ビデオ研究が始まってしまいました。

二人して夢中になって「あーでもないーこーでもない」なんていっていたら、数時間たっていましたが!!

質問によって、ものすごいやる気が出たり、逆に気持ちがなえたりするんですねっ。

日常的なことだけど、強くなる上で、とても大切なことかも!!


それではここで皆さんに質問です。

「格闘技の神様に、一つだけ質問していいとしたらあなたは何を聞きますか?」



ROUND24 原風景


「強くなりたい」、

いや「強くなりさえすれば全てが解決する」、そう思い込んですごしてきた青春時代。

結果、たいして強くなれなかったかもしれないけれど、

今、格闘家のリハビリやトレーニング、コンディショニングをライフワークとして生きています。

白衣を着たときはお医者さん、

ミットを持ったら格闘技トレーナー、

そして道衣に袖を通せば塚本先輩率いる渋谷道場の一道場生、

おうちに帰れば、娘の父親。

たまに自分が何者かわからなくなるときがあるものの(ひょっとして認知障害か?)、

いろんな立ち位置が刺激的だったりします。

なぜこんなことをするようになったのか?

私の記憶の中にはしっかりと原風景とも言える映像が保存されています。

その記憶とは、まだサッカーJリーグが設立されるずっと前。

釜本さんやセルジオ越後さんがまだ現役で活躍していた時代のことです。

リハビリの理学療法士であったうちの父親が、新日鉄サッカー部のトレーナーをやっていて、

試合観戦に誘ってくれたことがあります。

試合中にアクシデントが起こり、新日鉄側のある選手が倒れました。

そのとき、フィールドの外にいた、ウインドブレーカーを着た父は、

ダッシュで選手のもとへ駆け寄り、怪我のチェックと手当てを行いました。

幸い選手は軽症で、そのあとも試合を続行したのです。

あのときの父の姿は、我が親ながら、メチャクチャかっこよかった。

いつも家で見せる、父親としての顔ではなく、

フィールドでチームの勝利のため全力を尽くす仕事人の顔でした。

子供ながら、父の姿にしびれました。

いまの私自身の活動があるのも、

この原風景があるからかもしれません。

「空手家は医師にはなれないが、医師は空手家にもなれるんだ、」

そう言って教育してくれたのも父でした。

これからも、この原風景を、

格闘技の世界で実践すべくがんばっていきたいです。

格闘技を心から愛する読者の皆さん、

これからもご指導よろしくお願いします!!


ROUND23 一生、一勝、一笑。

「何で勝てるんだろう?」

「どうやってら勝てるようになるんだろう?」

「もしかしてこのまま一生勝てないで終わるんじゃないだろうか?」

高校生時代までは、試合に出てもなんとなく結果がついてきていました。

でも大学に入学してから、出る試合、出る試合、1年半、全く勝てない時期がありました。

勝てないときって、何をどうしたらいいかわかりませんでした。

だってやってること全て、「勝ちたいっ」と思って取り組んでいるにもかかわらず、

結果は全く望んでいないものになっちゃうんですから。

喉から手が出るほど「一勝」が欲しい。

連勝じゃなくていい、よくばりは言わない、一回戦勝つだけでいい。

一本勝ちじゃなくていい、判定でいいから、いやこの際、反則でもいいから「勝つ」っていうのがどんな気分か知りたい。

本気でそう思っていました。

勝てるようになってから、勝てない時代を見直せば、いろいろと見えてくるのですが、

勝てない迷路にいるときは、自分の立っている位置さえわからないのです。

「とにかく強くなりたい。」その気持ちだけが支えでした。

でも、今になって思うのです。

もしかしたら、勝てない時期って、本当に格闘技が好きなのか、試されているんじゃないかって。

それは、自分の可能性を信じれるかどうか、ということかもしれません。

結果が出ないときに、「強くなりたい」気持ちは大きく大きく育っていくんです。

「勝てない」から「強くなりたくない」人は遅かれ早かれ格闘技から離れていきます。

僕には、常に勝ち続ける人、負けたことがない人の気持ちはわかりません。

でもその代わり、とにかく強くなりたい人、勝ちたい人の気持ちが痛いほどわかります。

これって、凄く幸せなことかもしれないです。

だって、強くなりたいって気持ちの人は上を目指してがんばるパワーを持ってますから。

自分を本気で高めようとする人ですから。

格闘技を一度もやったことない人のありがたい言葉より、

愚直なまでに「強くなりたい」と願う選手のミットの音のほうが、

ずっと心に響きます。


ROUND22 出店ラッシュ

いま、全国的に格闘技の道場やジムがたくさんできています。

一時代を築いたビッグネームの選手や、現役でも活躍している選手たちが、続々と自分のジムや道場を開設しており、その勢いはここ数年、ピークを迎えているのです。

私の住んでいる東京では、JRの駅や私鉄ターミナル駅を中心に様々なジム、道場が存在しており、ときには一つのビルの中にいくつかの格闘技が混在していたりと凄いことになっています。

格闘技を愛するものとして、とても喜ばしいことではあるのですが、

時々ふと気になることがあります。

こんなに道場・ジムがあって競合しないのか、ユーザー(お客さん)の取り合いにはならないのだろうか?と。

別にそんな心配する必要はないのかもしれませんが、

今活躍中の選手だっていずれは自分のジムも持ちたいでしょうし、

格闘技ブームだって(実態は見る側のブームですけど)このままずっと続くとは思えません。

最近すさまじい勢いで増えている柔術の道場やサークルも、

柔術が全国に浸透した時点で今の成長が終わってしまうことは十分に予想されます。

今は選手の移動や移籍も昔よりイージーになっていますから、

今後道場・ジム間でも勝ち組と負け組がはっきりしてくるはずです。

きっと数年後、ジム、道場の生き残りをかけた熾烈な競争が繰り広げられることでしょう。

格闘技の道場・ジムですから、練習して強くなって当たり前。

それ以上のプラスアルファがないと、生き残りが難しい時代がすぐそこまできています。

格闘技を通じて、なにかほかでは得られない「価値」を得られる、

そんな道場やジムが次の時代をリードしていくのではないでしょうか?


ROUND21 一番大切な感覚とは?

今日はちょっと変な話を。(ひょっとしていつもか?)話半分で読んでください。

人間には様々な感覚があります。

視覚、触覚、聴覚、味覚、、、、、、、などなど。

あるとき一緒に練習している選手から相談を受けました。

「試合でなかなか勝てないんですが、勝つためには何が一番大切ですか?」と。

練習もしっかりしているし、技もスタミナもしっかりしている、なのになぜか勝ちに恵まれない選手でした。

もしかしたら、彼は私にスポーツ医学的な答えを求めていたのかもしれません。

科学的な見解を。

しかし、私は、「嗅覚、においです。」と答えました。

「えっ?嗅覚ですか?」その選手は少し拍子抜けしたみたいな表情で聞き返しました。

試合で戦ってる最中に、必ず「今ここを全力でがんばったら勝てる!」っていうポイントがあります。

勝ったことない人や、勝てない人はこのポイントがわかりません。

言ってみれば、自分の勝ち方を知らないんです。

でも、勝つときって、

はっきりとは説明しづらいけれど、「勝てる空気」というか、

もやっとした「勝てるにおい」みたいなものが確かにある、

というか私の場合あったんです。

「ここだっ!」というポイントをにおいで感じ取れれば勝てたし、ここだ!というときに攻め切れなければ、

私の嫌いな「延長戦」に突入、顔面蒼白状態から負けちゃってました。

一度、勝つときの「におい」を知れば、

勝ちに対する嗅覚が出来上がります。

その選手は、去年ついにスランプから脱出し、試合で上位入賞を果たしました。

試合後、道場であったとき、

「試合どうでした?」と私がきくと、

「確かに勝てるときのにおいがしました。」といってました。

もちろん、本当に嗅覚を鋭くする練習をするわけではありません。

ただ、勝つときは負けるときと何かが違う。

その感覚をあえて言葉で表現すると、やっぱり「嗅覚」になってしまいます。

人間が動物的感覚を働かせたり、古い記憶をよみがえらせたりするきっかけは「嗅覚。」

今週も嗅覚の優れた人たちとたくさん汗を流せて、うれしかったです。


ROUND20 最強で最弱

「格闘家は普通の人より強い身体をもっている。」

格闘技を見る側の人たちはそのように信じているようです。

ところが、実際に格闘家の身体はとーっても「弱い」。

「そうそう、俺、からだはあんまり強くないんだよねー。」

今、そう思った人は、普段からかなり追い込んでいる選手です!!

筋力やスタミナ、スピードといったフィジカルの面では確かに強いけど、

免疫力や健康といった面ではかなり弱い。

大切な試合前に風邪を引いて練習できなかった、

追い込むとすぐ体調を崩してしまう、

なかなか疲れが抜けない、、、etc

そんな体験を何度もしている選手も少なくないでしょう。

相手もそれなりに練習してきている状況で自分が勝つためには、より追い込んだ練習が必要なのは事実。

ここで大きく差をつけるとすれば、

そう、”コンディショニング”です。

皆さんの中で、インフルエンザの予防をきちんと実行している人いますか?

オーバーワークをきちっと管理していますか?

無茶な減量をしていませんか?

栄養の偏り、食生活は問題ないでしょうか?

せっかくトレーニングしても、大切な試合でコンディションが悪かったらアウトです。

ましてや、プロとして「自分」というブランドを売っていくつもりなら、なおさらです。

せっかく練習したあの技も、

みんなに励ましてもらってつくったスタミナも、

身体造りでサプリメントに費やしたバイト代も、

それらが生きるかどうかは、最終的にはすべてコンディショニングにかかっています。

根性でウイルスには勝てませんが、予防接種やうがいでかかりにくくすることは可能です。

(一流と呼ばれる選手とそうでない選手の差は、実はこんなところへのちょっとした配慮だったりするのです。)

怪我や病気を予防し、常にベストなパフォーマンスを実行できる能力=コンディショニング。

最強で最強、であるために。


ROUND19 東京格闘技

1999年に東京に来てから、7年目になります。

福岡県北九州で少年時代を過し、大学時代6年を高知で過ごした私にとって、

まさに「東京」は夢をかなえるための町。

テレビで見たことのある有名ブランド店。

毎日がお祭りのような新宿や渋谷の人ごみ。

おしゃれでおいしい焼肉屋さん。

高校生のとき、プリンスのコンサートではじめて行った東京ドーム。

当たり前の光景の、街角でのロケやインタビュー。

地方では入手困難な輸入CDが簡単に手に入るタワーレコードやHMV。

本当は千葉だけど、そんなことは気にならない、東京ディズニーランド。

東京に住んでいると、地下鉄や電車一つで簡単にアクセスできてしまいます。

そして、かつては格通やゴング、フルコンといった雑誌でしか知ることのできなかった、格闘技の中心もまた、「東京」。

駅の近くには必ずジムや道場があり、週末にはどこかの会場でかならず試合やイベントがあり、

有名選手や一流選手の練習も身近にあり、専門ショップでは、見たことないようなサプリメントも手に入ります。

東京には、格闘技がそこらじゅうにあふれています。

そして毎年、たくさんの人たちが夢と希望を持って、東京にやってきます。


ある人は、芸能界で一旗あげるために。


ある人は、ビジネスで成功するために。


そしてある人は、最強の格闘家になるために。

東京に行く人の数だけ、東京での夢がある


その一方で、東京から故郷に戻る人たちがいます。


決して夢をあきらめたわけじゃなく、路線を変更したわけでもない。

ただ、東京にずっとい続けるのは、ラクじゃないのは確かです。

3月が近づくと、東京で濃い時間を過した共に仲間たちが、ひとり、またひとりと、地方に帰って行きます。

一緒に殴り合い、蹴りあい、そして励ましあう、人間が考え出した最高のコミュニケーション、「格闘技」。

「地元でも格闘技やれよ!」

「いい道場、みつかるといいな!」

そんなよそ行きの言葉の裏の、

「もっと一緒に東京にいようぜ。」という気持ち。


自分が東京に必死にしがみついている分、寂しさもでかい。

彼らがいつ戻ってきてもいいように、

「東京格闘技」。


ROUND18 大山総裁の言葉

「佐賀に大山倍達が来るらしいよ!」

当時浪人生で、大学に入ったら極真に入門すると心に決めていた私は友人からの連絡にとても驚き、すぐに九州大会のチケットを購入し、サイン用のペンと色紙を買って準備していました。

そしてついに当日。

目の前の熱戦よりも、気になって仕方がないのが試合場前にそびえたつ巨人、牛殺し「大山倍達」。その姿は、誇張でもなんでもなく、本当に「山」のようなオーラに満ちていたのを今でもはっきりと覚えています。

「絶対にサインをもらって帰ろう」

友人と固く誓いながら、総裁に近づくタイミングを計っていました。

総裁の元に接近するには、試合場と総裁席の間を横切って総裁の前にたどり着くか、審判団のいる席を通って総裁の後ろからアプローチするか、二つの方法しかありませんでした。

わたしたちは、「総裁の試合観戦の邪魔になっては申し訳ない」と考えて、総裁のうしろから総裁の下へ駆け寄り、勇気を振り絞って、「押忍、大山総裁、サインをお願いします。」と十字を切りつつ頭を下げました。

そうすると、大山総裁は「まえから来いっ、まえからっ」

と、あの特徴のある大きな迫力と威厳に満ちた声で怒鳴られたのです。

「押忍、失礼しました。」とあらためて前から近づくと、色紙を手に取り、

【空手一代  大山倍達】

と迫力のサインをくださったのです。

男は、後ろから行くのではなく、きちんと正面を切って前からぶつからなければならない。

わずか数秒の出来事でしたが、私の心の中に大きく響いた大山総裁の言葉でした。


いまでも、何か困難にぶつかるとこの総裁が僕らにくれたメッセージを思い出します。


ROUND17 声

格闘技は一対一で戦う勝負です。

一見、チームワークより個人技優先に見えますし、格闘技を体験したことない人は格闘技にチームワークは必要ないように思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、実は格闘技には、チームワークがとっても重要なんです。

選手一人が強くなるのに、指導者、練習生、トレーナー、といったたくさんの人たちの協力が必要ですし、試合場でも、時間を計る人、試合順を確認する人、セコンド、などなどそれぞれが自分の立場で全力選手をバックアップすることで勝利がぐっと近づくのです。

試合場にあがると不思議なもので、いろんな雑音で非常にうるさい中、「よく聞こえる声」というのがあります。

道場で、ジムで、トレーニングで聞きなれた声。

それは自分のいいところも悪いところもすべて知り尽くしている仲間の声。

つらい時間も共有した戦友の声です。

相手がとても強く、勝機が見出せないとき。

あせってしまって、冷静さを失いかけているとき。

自分の攻撃がヒットしているのに、ほんとに効いているか自信がもてないとき。

「よく聞こえる声」が何度もピンチから救ってくれました。

仲間あっての格闘技


「圧倒的なパワー」、「底知れぬスタミナ」、「高度な技術」の追求はもちろんのこと、

あなたを支える「声」を大切に。


ROUND16 遠くて近い仲間

近年のインターネットやIT産業の発達のおかげで、情報交換がすごく身近なものになりました。

私も、かくくり、なんてサイトをやっていることもあり、全国各地、そして遠く海外からもアクセスやご連絡をいただく機会に恵まれます。

特に古くからの友人で、格闘技にずっと関わりながら、海外でも頑張っている仲間の頑張りには刺激を受けます!

カナダのトロント在住の岡 亮一君は、高校時代からの親友で、ずっと少林寺拳法の修行を続けている男です。

15年前、放課後に部室の裏で、二人でいろんなルールでスパーリングをやり、体育祭では演武の振り付けを一緒に考え、学校帰りのお好み焼き屋では、「東京にはシューティングというのが凄いらしい」とか「長州ってマジでやっても強いよな」とか、高校生らしい?格闘技談義をえんえんとやっていた間柄です。

今のようにテレビでゴールデンタイムに格闘技が流れる、なんてことは皆無に近く、時々のボクシング中継と金曜日のワールドプロレス、土曜日の全日本プロレスがみられる、という時代でした。

彼はいつも、「海外で少林寺の道院を開きたい」といっていました。高校を卒業し、アメリカに留学、そして現在ではカナダの中心地、トロントに自分の道場を持っています。

オーストラリアの杉森匠司君は、大学時代のカラテの同期でした。

稽古や審査、合宿などでは汗を流し、お互いお金がない同士でしたが(笑)、一緒に飯を食ったり、酒を飲んだりと楽しい20代をすごしました。

元バレー部で全身のばねがあり、真面目で練習熱心だった彼は、極真カラテでその才能を見事に開花させ4年のうちに全日本大会に出場するような強豪選手となりました。

あのサムグレコも重量級で優勝したオーストラリア選手権、中量級で見事優勝。

また全日本でも富平選手相手に素晴らしい試合を展開したと記憶してます。

そんな彼も、現在はオーストラリアで自分の道場を持ち、後進の指導に励みつつ、自らも現役選手として大活躍しています!!

海外で日本人として現地に溶け込み、東洋文化である空手や拳法の道場で指導するということは、言葉にできないくらいいろいろな苦労があることと思います。

言語の壁、人種の壁、文化の壁。そういった大きな壁を乗り越えながら、毎日頑張っている仲間たちの支えがあって、格闘クリニックは成り立っています。

彼らの頑張りをメールで知るたびに、「俺ももっと頑張らなければ」という気にさせられます。

遠くて近い仲間たち、そして格闘クリニックを応援してくれている皆さんに感謝です。


ROUND15 地上の星たち

 「プロのリングに上がって、大活躍し、見ている人たちに感動を与えたい!」

格闘家を志す若者たちは、夢に向かって日々辛い練習に耐え、夢に向かって頑張っています。

 一方で、決して年齢は若くなくても、「強い自分でありたい」ためだけに頑張っている人たちもいます。

彼らは決して、テレビや雑誌に登場することはないかもしれませんが、

強さを求める真摯な姿は本物です。

 今日は、そんな「地上の星」たちのお話です。

あるキックのジムに通う男性は、若くして大病を患い、大きな大きな手術をしました。

当然、担当医からはドクターストップ、格闘技はおろか、スポーツさえやらないようにいわれています。

でもその男は、疲れやすい身体に鞭を打って、強くなろうと努力しています。

トレーニングに参加しているときの表情は明るく、積極的で、大きな手術後であることをまったく感じさせません。

いや、本当は辛いのかもしれません。きついのかもしれません。

でも彼は、自分の身体を鍛え、いじめ、強くなろうとしています。

そんな彼を目の前にして、格闘技専門スポーツドクターでもある私ができることはただ一つ。

それは「彼を病人扱いしない」こと。

 また、40代のあるカラテ愛好家は、

普段は大変な激務をこなしつつ、時間を見つけては、汗を流しにいらっしゃいます。

その動機は「何かのときに、強い中年でありたいから」

みんなが嫌がる瞬発力テストも積極的に取り組み、

精神的に20代の選手をぐいぐい引っ張っていく姿は、若い選手にない「強さ」に満ち溢れているのです。

試合に出て、勝ち負けを競う。

これも強くなる過程でもちろん大切なことだとおもいます。

でも彼らを見ていると、強く生きるために格闘技をやっている。

格闘技を通して、もっと大きなものと闘っている。

現役バリバリのプロ選手に混じって、病気と闘い、社会でもがきながら、きらきら光る男たち。

そんな地上の星が、いったい日本にどれだけいるのでしょうか?

きっとみなさんのジム、道場にもいらっしゃるのではないでしょうか!!

格闘技を通じて、少しでも輪が拡がっていけば素晴らしいですねっ!



ROUND14 博多っ子の心意気


先週の日曜(9.26)、ゴールドジム大森サウスアネックスで開催されたキックボクシング興行、RISEへ足を運びました。

目的は、九州の台風の目、REALDEAL勢の医療面でのバックアップ。

かねてより格闘クリニックに全面的に協力してくれている友人からの紹介で、

REALDEALジムの畔田会長とのご縁が生まれたのでした。

REALDEALとは今福岡を拠点にものすごい勢いで伸びているキックジムのこと。

私は福岡出身なのですが、福岡県出身者は、福岡を離れても福岡のこと勝手に背負って生きています。(これホント)

武田鉄也も、タモリも、普段は東京在住なのに、ここぞというときには博多弁で笑いをとります。

松田聖子も、黒木瞳も、のりピーも、小柳ルミ子も、

その「芸」もさることながら「人間的な濃さ」で勝負している気がするというのが、

われわれ(といっても仲間内だけですが)福岡発東京組の一致した意見です。

そういうわけでこの日の試合は全7試合。そのうち3試合にREALDEALの選手(井出、裕樹、龍二)が出場したのですが、

これが強い!

下馬評では上の相手に、まったく臆することなくがんがん攻めまくり、3試合みんなKO勝ちしてしまいました。

技術的には3者3様なのですが、全体的なバランスのよさと軸の安定感が半端ではありませんでした。

終わってから選手といろいろ話したのですが、東京の選手とはまた違って、リングを降りたら「博多っ子」。いかにも山笠が似合いそうな若者です。

素朴で、まっすぐで、でもとっても濃いナイスガイたちでした。

全国警察ドキュメントでは、必ず福岡県警が暴走族取締りをやる映像が流れるため、福岡といえばファンキーすぎる都市という感じですが、

そんな福岡発の格闘家たちがこれからもリングの上で大暴れしてくれるに違いありません!

「博多っ子は、東京もんに負けたらいかんバイ!」


あっ、明太子はふくやの無着色のやつが好きです(笑)




ROUND13 メディトレの思わぬ副作用

 「怪我したときには、一体どんな練習をしたらいいのか」という長年の疑問に始まり、

いろんなジャンルの格闘家が集まって始まったメディカルトレーニング。

 最初のころは、時間外のリハビリ室に集まって怪我のケアとトレーニングを中心にやっていたのですが、

いろいろやっていくうちに、怪我をしないためには怪我をしない体の使い方があるんじゃないかってことで、

「あーでもない、こーでもない」と言いながら、いろいろみんなで研究を始めたのが数年前。

それがベースとなり、格闘技メディカルトレーニングが誕生、現在の格闘クリニックの活動の中心となっているのです!

(白井さん、中島さん、井上さん、宮沢さん、寺田さん、村上さん、三井さん、ありがとう!メディトレがあるのはなんといっても皆さんのおかげです。)

 現在は格闘技のメッカ、水道橋フィットネスショップでメディカルトレーニングクラスとして週一回行っているのですが、

なんと、これが思わぬ副作用をもたらす結果に!

 ふつう、自分のジムや道場だけで練習していると、自分のやっている格闘技のことを意識することがありません。

キックボクサーがキックボクサー相手にスパーをやるとき、自分はキックボクサーだとは普通意識しないでしょう。

それが他ジャンルに触れ合うときこそ、自分の立ち位置を明確に実感できるのです。

ボクサーが柔術家とはスパーしませんし、総合格闘家が極真ルールを体験することもあまりないでしょう。

ところが、メディトレでは、参加者が自分のルール以外のスパーリングも積極的に行うため、

自分の格闘技を再発見する場となっているのです。

例えば、カラテルールでは普段相手のタックルはきませんが、総合の人とやるとタックルがきます。

そうするとタックルを切ることを意識して動くことで、身体への大きな負荷になり、動くカラテをやらざるを得ません。

タックルを切った姿勢は、前屈立ちに近く、「やっぱ、前屈立ちって重要なんすね〜」と気がつく。

また総合の選手からしても、絶え間ないハイペースでボディーラッシュを受けると、気持ちを持続する集中力がつく。

キックボクサーと総合格闘家が、ボクシングルールやカラテルールで練習している、という面白い光景が見られるのです。

いろんな意味で、良い刺激の場になっているようです。

分裂分裂で、なかなか落ち着かない格闘技の世界ですが、

 強くなりたいと願うみんなが、ジャンルを超えて互いに刺激しあい、親交を深め合う場になればサイコーです。


ROUND12 ちょっと怖い話

 数年前の打撃系の少年大会での出来事。

高校生の女の子が、準決勝でボディーに前蹴りを喰らってお腹を押さえてものすごく苦しんでました。

普通、ボディーにまともに打撃を喰らって悶絶する場合、

多くの症状は一時的であり、数分もしないうちにおさまってしまうのは、

超打たれ弱いガラスのボディーを持つ私自身が何度も体験しています。

 この選手の状態は、冷汗の量とお腹の硬さが尋常ではなかったため、私の中の赤信号が点滅。

このとき、私はメインのドクターではなく、メインの大会医師のお手伝いとして呼ばれていたのですが、

メインの方はまったく格闘技を知らず、「大丈夫、大丈夫。少し寝ときなさい」とのんきなことをおっしゃておりました。

 おまけに、まだ3位決定戦が残っていたらしく、その父親が苦しむわが娘に向かって

「お前、こんなことであきらめるのかぁー?」

「我慢して試合にでろっ!」

と大声で怒鳴っているのです。

なんでもその父親は道場主も兼ねているらしく、娘が負けたことが受け入れられない様子。

(なに無茶いってんだー、この人は。親なら一番に身体の心配しろよっー。)心の中でシャウト(Tears For Fears)しつつ、

急いで救急車を要請し、救急病院に搬送したのでした。

 結果、打撃による衝撃で一時的に腸管の動きがストップ。

病院内の処置室で、数時間、点滴をうってやっと回復が見られ

外科の先生からすぐ送ってもらってよかった、という連絡を受けました、、、。

 格闘技の現場では何が起こるかまったくわかりません。

ケースによるとはおもいますが、

「大丈夫と思ったが、実は大丈夫でなく不安になった」状況より、

「ひょっとしてやばいかも、疑って検査したら特に問題なくて安心した」というほうが少しはましだと思うのですが、、、

みなさんはどうでしょう?

 夏になると必ずこの一件を思い出してしまう私でした。



ROUND11 アテネオリンピック

 アテネオリンピック。

 昔からどっちかといえばマイナー志向、マイケルジャクソンよりプリンス、松田聖子より早見優、ハーゲンダッツよりレディーボーデン、そしてオリンピックよりも格闘技が好きな私も、なんだかんだいいながらオリンピックを、そして日本勢の活躍をテレビの前で見守る日々が続いています。

そこで、とても気になったことがあるので書かせてもらいます。

ある柔道の試合。

日本人対オランダ人の試合で、明らかにオランダ人のスタミナが切れていた場面で、

ドクターチェックのため体格のよい外人のお医者様が、のそのそと画面左からあらわれたのです。

とてもゆっくり、選手の顔をチェックした挙句、試合場の真ん中をこれまたゆっくり、その巨体をもてあますかのごとく画面左まで横切っていったのです。

 「おいおい、わざわざ真ん中通ってさえぎることないだろっ」テレビの前で突っ込んだのは我が家だけではなかったのではないでしょうか?

この間、時間にすれば十数秒とほんのわずかな時間なのかもしれません。

しかし、相手をスタミナ面で追い詰めていた日本人選手にとっては、

この時間が相手に回復の時間を与えた格好になってしまった面は否めませんでした。

 事実、この試合の結果はオランダ人選手に。

期待された日本人選手は、残念ながら敗退してしまいました。

格闘技にかかわる医師として、とても気になったシーンでした。



ROUND10 がっ痛伝説

 東京で働いていると、いろいろな患者さんに出会います。

それは、都内の病院で救急外科当直していたある日のこと。

なんと、睾丸を蹴られて大きく腫れた若い男性患者さんが運び込まれてきちゃいました(汗)。

みたら、通常の大きさの3倍くらいにボールの部分が腫れているではないですか!!(冷汗)

 「何でこんなことになったんですか?ケンカでもしたの?」と冷汗にまみれる患者さんに問診です。

 患者さんは、

「僕、芸人なんですが、いまテレビの撮影で、ガッ○をみんなで馬鹿にして、ガッ○がわざとそれに切れて僕を投げ飛ばす、っていう設定だったんですが、ガッ○さんがマジ切れしちゃって、いきなり金蹴りですよ。もう、無茶苦茶ですよ。T○S、絶対訴えてやるっ。」

芸人さんはベッドの上で、痛みを我慢しながら一生懸命説明してくれました。

 これ、ネタじゃなくて本当の話です。

はなわの歌を聴くたびに、僕は、この伝説のいけにえになってしまった芸人さんを思い出すのです。

芸人の皆さん、収録のときは金的カップがあればOK牧場!?



ROUND9 格闘技の理由(わけ)

 格闘技を志す理由。

ケンカに強くなりたい、精神的にも強くなりたい、強い選手にあこがれていた、、、、、、、。

いろんな事情で、いろんなわけで、格闘技の世界にみなさん足を踏み入れるのです。

 「なんで格闘技はじめたの?」

縁あって出会った格闘家に、僕は必ず聞くようにしています。

 かっこいい、表向きの理由ではなく、本当の「わけ」を。

 けっこう多いのが「球技やメジャースポーツに挫折した」派。

野球、サッカー、バスケットボール、、、、、、、。

幼少時から運動の才能のあるやつは、「スポーツの表舞台」、球技にいきます。

そうなんです、小、中学校時代は球技ができるやつはとにかくもてるし人気がある。

 それから、「走るのが異常に速い」でも、運動会のリレーで、女の子から黄色い声援が飛びます。

ざんねんながら、「異常にパワーがある」では学期末の大掃除のときに女の子から声がかかるくらいなものです。

「牛乳を飲むのがクラスで一番早いヤツ」のほうがステイタスは上だったりします。

 カラテ家は、球技への恨みを晴らすためにバットをへし折る、という話も、

本当のように聞こえてしまう、2004年(オリンピックイヤー)の夏です。



ROUND8 練習で強い人、試合で強い人

 練習では弱いのに、試合ではめちゃくちゃ強い選手がいます。

 逆に、練習では恐ろしく強いのに、試合では実力が発揮できず、結果が出ない選手がいます。

「本番で強くなるには、どうしたらいいのか?」

勝ちにこだわる選手なら、一度はぶつかるテーマではないでしょうか?

そこで、プロの舞台で活躍する「本番に強い」選手(かなりビッグネーム)に話を伺ってみたところ、

「練習は実験の場であって、強さを発揮する場じゃないから、たくさん不得意なことをするべきなんです。

そういう意識でやってると、くやしいけどスパーリングは弱い(笑)。

でもその分、観客の前で強さをみせてやればいいんですよ!」

というコメントが。

 いっぽう、指導者として練習でも弱い面をいっさい見せることができない立場の選手もいるでしょう。

そういう選手は、別に失敗できる場所をもっておく、というのも「本番に強い選手」になるための秘訣といえるかも。


現役時代はあっという間です!「練習のための練習」ではなく「本番で勝つための練習」をめざしましょう!


ROUND7 転倒注意報。

 「格闘技に怪我はつきもの!多少の怪我は我慢して戦い抜くのが真の格闘家である」

確かにっ!スポーツドクターとはいえ、基本的に根性論である私も、この意見に賛成の立場です。(いいんですかっ、そんなことで!)

 それじゃあ、我慢できない怪我が起きたらどうしましょう?

残念ながら、現実の試合では、続行不可能なアクシデントが起こってしまうものです。

なかでも、とくに無視できないのが、打撃系格闘技におけるスリップダウン!!そうです、転倒というやつです。

打撃系では打撃の怪我が多いのでは、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

そのとおり、怪我全体では打撃が原因のものが多いのですが、続行不可能となるレベルの怪我の原因に、「転倒」は少なからずあるのです!

 あれは、ある打撃系の大きなトーナメントでした。予選を勝ち抜き参戦した猛者たちが集う、ハイレベルな全国大会で、強豪選手が転倒。変な形で腕をついてしまい、肘を骨折してしまいました。

それまで優勢に進めていた試合で、スリップダウン。受身が取れず、自爆してしまいその後の試合は棄権せざるを得なかったのです。

 また、別の大会でも、転倒して肘がおもいっきり変形、脱臼してしまった現場に遭遇しちゃいました。

(そのときのレフリーのびっくりした表情!いまでも忘れられません。)

このような本人も予想していないアクシデンタルな怪我の予防のためにも、転倒注意報!が出ています。

 投げがルール上あるなしにかかわらず、試合に出る選手は、最低限の受身と正しい転び方の練習することををオススメいたしまーす!



ROUND6 あぶない!成長期の減量

 先日、親しくしているレスリング指導者の方からお電話をいただきました。

何でも、「小学生や中学生の間で、過酷な減量を強いて、階級を落として参戦させるチームが後を絶たない、スポーツドクターの立場から、成長期の減量についてどう思われるか是非意見を伺いたい。」というものでした。

 結論から言うと非常に危険!

成長期は骨や筋肉を作る栄養素はもとより、神経系、ホルモン系など人間としての活動に必要な栄養素を不足なく摂らなければならない重要な時期なんです。

そういう大切な時期に、自分のところの生徒を勝たせたいがために、チームとして減量をさせる指導者がいるというのです。

 レスリングに限らず、少年期のスポーツ、格闘技の目的として

「運動を通して健康な身体と心をつくること」を外してはならない、とわたしは思っているのですが、みなさんはいかがでしょう?

もちろん、結果を出す体験を若い頃からさせることも必要でしょう。

しかし、あくまで子供ですから、たとえ選手志向の場合でも「将来大成する選手育成」に力を注いでほしいと思います。

 その指導者の方いわく「今は、チームとして結果が良くないと保護者たちからクレームがくることもあり、指導者だけの問題とは言い切れない状況なんです。」とのことでした。

(うーん、確かに親のほうが一生懸命なこと、少年大会ではよくある光景ではあります、、、、。)

 「減量させて、リーチや体格、体力差で有利となる下の階級で勝つ」、ということは、

「将来、体力で勝る外人選手を相手にしたときに、勝てない」選手を育てている、ということに気がついてほしいです。

 とにかく、成長過程にある子供に減量をさせて勝たせるという流れに、非常に危険なもの感じます。

子供らしく、体格差や体力差ではなく、「動きの良さ」で勝つ、

 そんな選手がたくさん出てくることを期待します。


ROUND5 格闘語〜格闘家特有の言葉2

 格闘家、特にカラテなどの武道系にも特有のことばがあります!

ごぞんじ、”押忍”。

修行の過程でいろいろあるけれど、それらを「押して、耐え忍ぶ」というのが本来の意味。

ですから決してYESではないのです。

 そんな”押忍”ですから、格闘家は”オス”には様々な意味を込めています。

おすには、「こんにちは」「もしもし」「お元気ですか」の挨拶代わりにも、また「ありがとうございました」のお礼、返事の代わりなど

その活用範囲は驚くほど広いんです!!!

(Re:Re:Re:おす!ってのを最近よくみかけるのは、わたしの携帯だけでしょうか?)

 例えば、指導員の先輩から

今月の日曜、急に試合のオファーきたんだけど出てみない?

と聞かれて、

・「おすっ!」と明るく大きな声ではっきり言えば、「待ってました、是非出場させてください!」の「オス」。

・「おす?」と小さめの声で、やや語尾を上げて答えれば「マジですか?ちょっときいてないっすよ」の「オス」。

・「おーす。」と少し伸ばして言えば、「了解しましたー」の「オス」。

・「ぁおす。」とちょっと小さめの「ぁ」が入れば「しょうがないなー。断りたくても断れないしなー」のあきらめの「オス」。

 とまあ、そんなわけでして、

格闘家同士が携帯電話で話しているときには
「おす!」
「おす?」
「おーす、おす、おすおすおす、ありがとうございます、おす。」

と「おす」のオンパレード、周りに人には何をしゃべっているのかまったくわからないことがよくあります、おす。


ROUND4 ウェイトトレーニングは是か非か

 格闘技で強くなるのにウエイトトレーニングは是か非か?

強くなりたい!派の皆さんにとって、一度は目にするテーマかもしれません。

いわく「ウエイトをやると筋肉が固くなり闘いには使えない」

いや、「ウエイトをやって筋力をつけないと外国人には勝てない」

この論争に終わりはないのかもしれません。

 格闘技ドクター的にはどちらの立場なんですか?そう聞かれることが増えてきたので私の意見を少しだけ。

この論争の問題点は、「個別性」と「時期」がすっぽりと抜け落ちて、方法論だけが先行している点にあると常々感じているのですがいかがでしょう?

 選手を診ていて面白いのは、身体の特徴、動きの特徴から、

ウエイトをやったほうがいい!という選手とやらないほうがいいという選手がいることです。

 私から見てやったほうがいい選手の特徴は、関節可動域がややオーバー気味の選手や靭帯の怪我が多い選手。

ときどき恐ろしく関節が柔らかい選手がいますが、彼ら(彼女ら)の場合は、筋を超えて一気に靭帯に負荷がかかるので筋力トレーニングで、関節を硬くしてやる必要があるのです。

おまけに、打撃がクリーンヒットしているのに相手が倒れない場合などは、自分の関節がパワーを吸収してしまっていることがありますからウエイトによる強化が強さにつながります。

 また強くなる過程として、ある程度の身体が出来るまではウエイトをやるのには大賛成です。

達人を目指し、ウエイトを否定して、数十年かけて作っていくのも一つの方法ですが、格闘選手としての現役期間はあっという間ですから初期の段階で身体作りを集中してやって、技術のレベルアップとともに動きのほうに移行していくのも一つの道でしょう。

 逆にやらないほうがいい選手は、可動域が狭くなってしまっている場合や動きがウエイトの動きになってしまっている場合。

自分より軽い、またはパワー的に劣る選手に苦戦しだすと、せっかくつけて筋力がうまく生かされていないことがあります。

ウエイト大好きな選手は、「格闘技に生かすために」はじめたウエイトトレーニングが、いつのまにか「パワーをつければ勝てる」に変化してしまっている場合が少なくないのです。

こういう場合は、いったん持っているパワーを有効に生かす時期に来ている、と考えるのも悪くないと思います。

格闘技は体重移動を伴うパワーの発揮。ウエイトは多くは体重移動を伴わない筋力の発揮。これらの違いを明確に理解・意識できている選手は意外に少ないようです。

 いまは情報が溢れていて、いろんな強くなる方法、メソッドがありどれがいいのか迷うほどです。

そのなかにあって、あなた自身にいま必要なトレーニングは何か、選択する能力も問われています!



ROUND3 頑張れ!谷 亮子!

女子柔道っていえば、ほとんどの日本人がヤワラちゃんこと、谷 亮子(旧姓:田村 亮子)選手のことを思い浮かべるのではないでしょうか?

そのくらい彼女の強さ、実績、存在感、そしてキャラクターは輝いており、柔道界のみならず、格闘技界、スポーツ界を超えて影響力があることは誰もが認めるところだと思います。

 そんな谷選手が、アテネオリンピック直前に強化合宿で怪我をしてしまったらしいのです。なんでも、強化合宿の初日に、ずれた畳の隙間に左足親指が挟まって転倒し腱を損傷したとか。

柔道のみならず、寝技、立ち技をとわず最近少なくないのが、畳やマットによる怪我。この手の怪我って辛いですよ、実際。

最近格闘技ジムでも、マットをつないだ形のものを使用している場合が少なくないんですが、これに足の指を引っ掛けて骨折もしくは腱を損傷してしまったケースって結構あるんですねー。(僕も何度か相談受けてますが、根本的な予防は、練習前にマットや畳などをチェックするしか対策はないんですわ。)

野球やテニスと違って、道具がなくても楽しめるのが格闘技のいいところ。その手軽さから、つい設備やツールに目が行かないことがありますが、マットチェックやリングチェックは出来ればやったほうが安全かも。(僕も気をつけようっと。)

 ちなみに谷選手は、実家福岡でリハビリをやったそうです。さすが!

とあるマスコミには、「入院したほうがいいんじゃないか?」って書いてありましたが、彼女くらいのトップレベルになれば自分の方法でリハビリをやるのがベスト、だと僕も思います。

下手に入院なんかして、体力レベルが落ちちゃったほうが危険だったりします。

 ここからは勝手な想像ですが、きっと谷選手は怪我が治りきらなかった状態を想定して、いかに勝つか、を今考えているのではないでしょうか?

一流と呼ばれる選手は、試合までに完全に治癒しないときや、試合中、再発が予想されるときは、完全に頭を切り替えて闘い方をアレンジする能力に長けています。(勢いのある若手を抑えるにはこういう見えないところが鍵!)


そういった意味でも、みなさんにも、今度のオリンピックでの谷選手の活躍を格クリ的視点から注目してほしいとおもいます!

 誰ですか?「これで勝ったらおいしいぞ!」なんて言ってるのは!!


ROUND2 ベンチと、パンチ?

 それは膝の靭帯損傷でリハビリ中のプロ選手の一言から始まりました。

「ベンチプレスの記録はどんどん上がっているのですが、パンチがちっとも強くならないんです」

なるほど、確かに彼の身体を見るとウエイトトレーニングをやり込んでいるだけあって筋骨隆々としています。

ベンチでも自分の体重の約2倍を挙げるパワーを持っていました。
またメディカルチェックで行った、実際の筋力テストでもかなりの好成績でした。

 みなさんも、多分はじめて彼にあって身体を見たら、決して打撃が弱くて悩んでいるようには見えないでしょう。

 「それでは、少しフォームを見せてもらえますか?」

シャドーをやってもらい、その後、構えたミットにパンチをもらって原因がはっきりわかりました。

それは彼のパンチがまさしく「ベンチプレスの動き」だったこと。

 誤解してほしくないのは、ベンチプレスがパンチに良くないのではなく、パンチがベンチのフォームになっていることが問題なのでした。

 ご存知の方も多いかと思いますが、ベンチプレスの動きとパンチの動き、これはスポーツ医学的にもまったく異なる動きなのです。

簡単に言うとベンチプレスは「台に体幹を固定して、上肢を前方に突き上げる動き。」筋肉を発達させるという目的にあっては非常に理にかなった動作です。

これに対してパンチは「上半身、下半身をうまく使って体幹を移動させながら、身体の中から生まれたパワーを上肢を通じて相手に伝える動き。」格闘技の場合、パワーを相手に伝えることが目的ですから動作目的が基本的に異なるのです。

そうです。彼にはベンチをやって発達させた上半身の筋力を体幹、下半身とうまく連動させてパンチに生かしていく作業が必要だったのです。

 それから動作改善計画が始まりました。

最初は解剖学的に正しい立ち方、構え方に始まり、運動学的に無理のない身体の運用をメニューとし、疑問点や方法などをメールで何度も確認しながら進めていったのです。

格闘技的トレーニングだけでなく、ボールを使ったり棒やタオルを使ったりと、見ている人には何をやっているかわからないような変なトレーニングのオンパレードでしたが、彼の膝の靭帯は治癒し、打撃のフォームはより良くなり、身体全体の動きが明らかに軽くなっていきました。

いまではその選手は順調に結果を出してきおり、今後の活躍が非常に楽しみな一人です。

 格闘技トレーニングには「パワーやスタミナをつけていくトレーニング」と「身体を効率よく生かすトレーニング」があります。

 もしスランプにある選手は、現時点でどちらのトレーニングが必要か、見直してみるといいかもしれませんね。


ROUND1 格闘語〜格闘家特有の言葉

格闘技選手の診察やメディカルトレーニングをやっていると必ずみんなが使う言葉があります!

ふつう、格闘技じゃない患者さんは「痛いですか?」と訊くと「痛いです」、もしくは「痛くないです」と答えます。

でもなぜか格闘家の場合、流派や団体問わず、

わたしが「痛いですか?」と聞くととっさに「大丈夫っす」てみんな口にします。

大丈夫かどうかきいてないのにっ!

痛みの評価しなきゃいけないから、痛いかどうか聞いているのに(笑)!

しかも男性は「です」の「で」を省略する方が圧倒的に多い!

「先生、今度の試合でてもいいっすかね?」

「大丈夫っす」

そう答えがかえってくればそのドクターはきっと格闘家の味方でしょう。