少年少女の格闘技医学1  子供の格闘技



「健康であること」
子供は大人を小さくしたものではなく、常に成長を続けているという特徴があります。
運動は身体、精神の発達を促進する面があるのと同時に、非常にデリケートな身体に障害を起こしやすいという面もあります。格闘技、スポーツの世界でも少年、少女の成長、発達に合ったシステムが求められています。


ピークを意識した練習を。
スポーツの種目によって、全盛期は異なります。水泳や体操などは10代から20代前半と比較的全盛期が来るのが早く、野球やラグビーなどは大人になってからが最も充実している年代でしょう。
競技としての格闘技の場合、種目にもよりますがは20代から30代にアスリートとしてのピークがくることが多いような気がします。ですから健康に十分配慮した長い眼で見た指導が求められるといえます。

何歳ぐらいでどんな練習をすればよい?
個人差はありますが、発達・発育のパターンを考慮したメニューが理想的です。
人間の成長は、脳神経系→呼吸・循環系→筋骨格系という順に発達のピークがきます。

11歳以下:いろいろな動作に挑戦し、スマートな身のこなしを獲得する時期(脳神経系)
12〜14歳:スマートな動きを持続させる能力を身につける時期(呼吸・循環系)
15〜18歳:負荷を増やし、スマートな動作を長続きさせるとともに、力強さを身につける時期(筋骨格系)
19歳以上:身体動作を十分に発達させつつ、試合の駆け引きといった心理的テクニックを身につける時期
(子供のスポーツ医学:小児医学より引用)

栄養と休養の必要性
運動を行う子供は、運動をやらない子供よりもエネルギー(カロリー)、ビタミン、カルシウム、鉄分といったミネラルがより多く必要となります。ファーストフードや既製品、外食ばかりではこれらを十分に摂取することはできず、このような食生活ではスポーツの成績はおろか、健康も損なってしまいます。強く、健康になるには保護者の食生活への注意が欠かせません。
休養も効果的な練習をするのには欠かせない要素です。蓄積した疲労が回復してから次の練習に向かうよう習慣づけましょう。中学生くらいですと、週3、4回で一日2時間程度の集中した練習が効果的といわれています。

筋力トレーニングはいつごろから始めるか?
低年齢で器具を用いた筋力トレーニングをはじめると、効果がないばかりか筋肉や関節、骨の障害を起こします。
ですから関節や骨がほぼ完成する15歳から17歳くらいから(高校生)徐々に筋力トレーニングを行うのが望ましいとされています。また、中学では、ウエイトを利用した筋力トレーニングでは負荷が大きすぎるので腕立て伏せや懸垂といった自重を負荷とした筋力トレーニングにとどめておきましょう。
トレーニングの際は必ず指導者や補助者をつけて、ウォーミングアップ、ストレッチを併用して行います。大人と違って筋肉痛は積極的に起こさないほうがいいでしょう。筋力トレーニングで関節、骨などに痛みが出てくるようであれば専門医を受診しましょう。


体重コントロールは?
大人と違い日々体重はUPしていくのが子供の特徴です。
子供の場合は高度の肥満や高脂血症等で医師から指示されている場合以外は減量は禁物です!
階級制度のある競技の場合、成長期にダイエット、減量を強いている場合がありますがこれは成長の妨げになるばかりか、精神的ストレスとなり様々な病気の誘因となりますので、階級に本人の体重を合わせるのではなく、本人のその時点でのベスト体重の階級に出場させるように導いてくあげましょう。

オーバートレーニングに注意!
格闘技の競技人口の拡大に伴い、現在多くの少年少女を対象とした大会が開催されています。子供たちが格闘技の楽しさを知り、勝ち負けを経験していく中で学ぶものはとても意義深く、学校や家庭では得がたい経験となることでしょう。しかし残念ながら、道場やクラブによっては目先の勝利に走り、毎日毎日大人顔負けの練習を行い、その結果オーバートレーニングに陥るケースが見られるようです。オーバートレーニングによる慢性疲労は本人には自覚しにくく、なかなか子供が自分から訴えることはありません。ですから保護者や指導者が注意深く観察してオーバートレーニングを防ぐ努力が求められます。

オーバートレーニングチェック項目12 チェック
1、寝つきが悪い (      )
2、興奮している (      )
3、食欲低下 (      )
4、体重減少 (      )
5、頭痛 (      )
6、動悸 (      )
7、発熱 (      )
8、苛立ち (      )
9、やる気がない (      )
10、汗を多量にかく (      )
11、生理不順 (      )
12、怪我が多い (      )

以上12項目のうち一つでも当てはまればオーバートレーニングが疑われます。治療は「休養と栄養」です。

子供らしく楽しく!
子供のスポーツ、格闘技の目的は「健康的に強くなり心身ともに立派な大人になること」に集約されると思います。家庭生活、学校の勉強や体育の授業、友達との遊びも大切にしながら、楽しく、遊びの要素を忘れずに続けて欲しいですね。